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Godwin, W (1756.3.3-1836.4.7)
 イングランドの政治哲学者。世界最初の無政府主義者といわれる。婦人解放運動の先駆者メアリ・ウルストンクラフト (Mary Wollstonecraft)の夫,詩人シェリー夫人の父。厳格なカルヴィニズムで教育された。はじめ僧職に身をおいたが,フランス唯物論の影響により理神論に,のちに無神論に転向する。信仰を捨てて文筆で立とうとし,Life of Chatham, 1783(『チャタム伯(=ピット)の生涯』で波瀾の多い新生涯にスタートした。ウィッグに近い線にいたけれども,党派に属することはしなかった。フランス革命のさいには,熱狂的な同情者であり,ペインのフランス革命原理擁護の書『人間の権利』は手稿で読んでいる。93年,主著の一つ『政治的正義に関する研究』が刊行され,イギリス・ラディカリズムの代表的哲学者として名声を獲得,その著作は,多くの知識層を惹きつけた。その後も,反動的思想との闘いを続けるが,18世紀の末には,トゥーク等の思想関係裁判やパー (S. Parr) ,マキントッシュ (James Mackintosh) ,およびマルサスへの反批判に関する,著作・パンフレット類を書く。やがて,ワーズワース,ラム,コールリッジらと職り,歴史と文学とに関心を向けるが,基本的な思想は変らない。しかし,彼の名声はすでに衰え,1811年詩人シェリーが彼の生存に驚いた程,忘れられた存在となっていた。経済的にも家庭的にも恵まれず(ウルストンクラフトは結婚の年に,のちにシェリー夫人となる一女を残して死んだ),友人の援助を必要としたが,22年には破産を経験している。こうした不幸にもかかわらず,彼は多産な著作家であって,1820年,マルサスの『人口の原理』に対する反批判 Of Population (『人口について』)を出し,30年には Thoughts of Man (『人間の思想』)を書いた。
 An Enquiry Concerning Political Justice, London, 1793; 3 版,1798 (『政治的正義に関する研究』)は,モンテスキューとバーク (E. Burke, 1729-97) とへの回答の意味を含みつつ,フランス革命のさなかに,没落小生産者の立場から,ブルジョワ社会の否定を試みたもの。基本的に功利主義の上に立つが,政府や法律を否認して,理性により「正義」の原則を認識し,それに従う自由な人間の集合体としての,新し理想社会が構想されている。そこに彼の無政府主義と呼ばれるものがあるが,この理想社会を実現する方法としては,政治改革もしくは法改革の手段,とくに暴力は厳に否定され,人間改革によってのみこれを実現すべきだとしている。人間は完成可能であるというのが,ゴドウィンの基本的信念の一つであった。理想社会では,国家とともに私有財産も消滅し,全成員がわずかな時間の労働で生活必要品を生産し,余暇を知識の増大にあてると予想されている。
 その他 The Adventures of Caleb Williams, 1794; The Enquirer, 1797; History of the Commonwealth of England, 4 vols., 1824-28等。(学)


Enquiry Concerning Political Justice (Book I - VIII) (socsci.mcmaster.ca)
Enquiry Concerning Political Justice (Book I - VIII) (ecn.bris.ac.uk)
Enquiry Concerning Political Justice (Book I - VIII) (unimelb.edu.au)


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