Spinoza, B. de (1632.11.24-77.2.21)
 オランダの哲学者。ポルトガル系ユダヤ商人の子。初めユダヤ教団所属の学校でヘブライ語その他宗教的教育を受け,同派の神学,神秘思想等を研究したが,西欧的思想に興味を寄せ,数学,自然学,デカルト思想等に傾倒し,自由思想家達と交わった (1654-56頃)。ためにユダヤ教会から破門され (56),レインスブルクついでフォールブルクに居住,専ら思索に過ごした。のちヘーグに移り (70),またハイデルベルク大学からの招きを辞退したこともある (72)。『神学政治論』Tractus theologico-politicus , 1670.によって無神論者のそしりを受け,十数年を費やして完成した (75頃)主著『倫理学』Ethica ordine geometrico demonstrataも,生前刊行不能になった。若いとき学んだユダヤ神学者や神秘家の影響もあって,早くから唯一絶対の神とその内在性とを信じ,これにデカルト思想を綜合することによって,汎神論的一元論を立てた。即ちデカルトが実体とした物体と精神とを,それぞれ唯一なる実体即ち神の属性(延長と思惟)と解する。物心両界の事象は神のほかにあるのではなく,実体の「様態」として「神即自然」が主張される。しかも両界は等しく神から発する因果の法則に支配され,そこには自由や偶然は存在しないという(決定論)。しかし事物には自己の存在を維持する傾向,即ち自存性があると考えられ,これに基づいて政治および道徳の思想が展開される。即ち国家についてはホッブズの契約説に倣うが,それは上の自存性を合理的に発揮する為に,理性の教えに従うものと解せられる。また道徳の実際目的は我々の至上の福に見出されるが,それは自存性増大に伴う喜悦の純粋必然的なものとして,人間に固有な理性から発するものと考えられる。ところで理性の最高の働き即ち認識は,神との必然の関係において,即ち「永遠の相下に」事物を直覚することであるから,これに伴う自足感を「神の知的愛」として道徳の理想と考えた。彼の思想は無神論,唯物論として約百年間葬られていたが,ドイツ哲学等に影響した。[主著]前記のほか:Tractatus de intellectus emendatione , 1677; Tractus politicus , 1677; Korte verhandeling van God, de mensch en deszelfs welstand .[全集]Gebhardt編,4巻,1923-24.[文献]Freudenthal-Gebhardt, Spinoza, Leben und Lehre , 1927.(岩)


Studia Spinoziana (mtsu.edu)


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