Photo by Universite de la Mediterranee (AIX-MARSEILLE II), France
Steuart, J. D (1712.10.21-80.11.20)
 スコットランドの貴族。重商主義の最終段階にその理論の体系化をを行なった。はじめ弁護士で立とうとし,西欧諸国を歴遊ののち,ジャコバイトの乱 (1745-46)に加担してウィッグ党政権の打倒を計ったが失敗,再び大陸諸国で長い亡命生活を送り,63年に許されて帰国,以後はコルトネスにこもって農場経営と執筆とに専念した。スミスとの直接の交渉はなかったが,『国富論』はステュアートの主著への批判の意図をひそかに蔵している。(全集:6巻,1805)
 An inquiry into the principles of political economy , 2巻,London, 1767;3巻,Dublin, 1770;全集版,I-IV(『経済学原理』)は,イギリスで最初の「政治経済学」の書名を持つ大冊。次の5gから成る。I 人口と農業,II トレードとインダストリ,III 貨幣と鋳貨,IV 信用と負債,V 租税。このうちIIIまでは亡命中に書かれ,全巻の理論的基幹部分であるIとIIとは1757-58年に成立した。Iは近代社会の本質を自由な労働(インダストリ)に基づく商品経済として捉えて,これを強制的労働(レイバー)に基づく古代や中世の経済と対比させ,前者の生成過程を農工分離の過程として理論的に跡づけている。すなわち独立農民(ファーマー)のつくる社会的剰余の増加が一方に工業者(フリー・ハンズ)の増加を可能にし,これら両階層のあいだの商品交換の範囲の拡大がすなわち近代社会の展開であるから,人口増加は農工分離の進行を伴うのでなければ近代社会の原理に反するとした。これはヒューム対ウォーレスの人口論争に対して前者に組したものである。だが一方,ファーマーのつくる社会的剰余の増加は「適当な等化物」である貨幣の供給すなわち有効需要(ステュアートの用語ではeffectual demand)の確保を前提とするとし,それは為政者が貴金属貨幣を富者の退蔵のなかから引出すことを必要とすると説いて,ここから奢侈の経済的効果を重視した。すなわち「仕事と需要との均衡」がたえず人工的に保たれねばならないとするのである。IIは,トレードの発達が価格を生産費の基礎の上に安定させることを指摘し,後者の分析に着手してスミスの前駆ともなっている。しかもここでは,利潤は流通のなかで獲得される「譲渡利潤」 (profit upon alienation)と解される一方,生産過程からそれが生まれる事態もようやく掴まれかけており,そのうえケネーと異なってフリー・ハンドに即して論ぜられている。III以下は以上の有効需要の原理に基づく統制政策論の展開であって,きわめて詳細かつ一貫している。ここではローの後継者としての信用貨幣発行論と,まさにスミスと対極的な,国家の主導する財政政策論とがとくに注目されるが,それらは同時に,ステュアートの遅れた経済的地盤をも物語るものである。この書の特質は,流通の立場にとどまる重商主義の経済理論を集大成し,とくにそれを,すでにマンドヴィルに示された有効需要の視角から体系化したところにあり,その詳細さと緊密さとではむしろ跡のマルサスを凌いでいるが,他面,著者の実践目的が原始蓄積の遂行にあったために,到るところで未熟な理論段階にとどまっている。この書がスミスの『国富論』出版後しだいに忘れられたこと,しかし大陸では評価され続けたことは,この事情による(なお,本書の初版には,わが国での復刻版がある)。(学)


An Inquiry into the Principles of Political Oeconomy (Bk.II, Chap. VII) (1767) (ehess.cnrs-mrs.fr)
An Inquiry into the Principles of Political Oeconomy (Bk.I-V) (1767) (socsci.mcmaster.ca)
An Inquiry into the Principles of Political Oeconomy (Bk.I-V) (1767) (ecn.bris.ac.uk)
An Inquiry into the Principles of Political Oeconomy (Bk.I-V) (1767) (unimelb.edu.au)


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